精液調整後の精子の室温保存が臨床成績に及ぼす影響
2018年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:金子 繁・上野 智・内山 一男・沖村 匡史・小林 保・加藤 恵一
加藤レディスクリニック
Abstract
目的:精巣の温度は、精子の形成および保存のために体温より2-3度低くなっていることはよく知られている。近年、精液調整後の精子を体温と同じ温度で長時間保存することによって活性化酸素およびDNAfragmentationが増加することが報告されているが、臨床成績との関連を示した報告は少ない。今回、精液調整後の精子の室温保存が臨床成績に及ぼす影響を後方視的に検討した。
方法:2017年10月から2018年5月の間に、クロミフェン単独による低卵巣刺激周期にて採卵を行なった採卵施行回数3回以下の患者で、新鮮射出精子を使用し、c-IVFおよびICSI施行となった成熟卵子を対象とした。媒精までの間、精液調整後の精子を加温されていない加湿型インキュベーターにて保存したものを室温群、従来通り37度に加温された加湿型インキュベーターにて保存したものを37度群とした。それぞれの群におけるc-IVF(室温群:172周期、平均年齢38.2±3.5、37度群:166周期、平均年齢38.5±3.5)およびICSI(室温群:307周期、平均年齢37.9±4.0、37度群:309周期、平均年齢37.7±4.0)施行後のday2単一新鮮胚移植における臨床妊娠率(胎嚢確認)および流産率を比較した。また、それぞれの群の余剰胚における、胚盤胞発生率および良好胚盤胞発生率を比較した。
結果:室温群および37度群における、day2単一新鮮胚移植後のc-IVF由来胚の臨床妊娠率(27.3%vs.20.5%)および流産率(9.4%vs.17.1%)、ICSI由来胚の臨床妊娠率(23.8%vs.23.0%)および流産率(12.0%vs.8.9%)に有意差は認められなかった。また、c-IVF後の余剰胚の胚盤胞発生率(72.4%vs.68.8%)、良好胚盤胞発生率(59.0%vs.56.3%)、ICSI後の余剰胚の胚盤胞発生率(66.5%vs.67.7%)および良好胚盤胞発生率(56.5%vs.56.7%)に有意差は認められなかった。
考察:今回の検討では、両群において同等の臨床成績が得られた。しかしながら37度で精子を保存することにより、ネガティブな報告もあるため、今後症例の増加とともにさらに詳しく分類し検討していく。