睡眠の質は受精率に影響する
2020年度 学会誌 掲載論文|Vol23-1
著者:赤松里美・藤井美喜・江夏徳寿・大月純子・岩崎利郎・苔口昭次・塩谷雅英
英ウィメンズクリニック 〒 650-0021 兵庫県神戸市中央区三宮町 1-1-2 三宮セントラルビル
Abstract
妊娠を望む女性の睡眠障害は,妊孕性の低下や不妊治療に対する反応にも及ぶと推察されてい るが,その報告は十分ではない.そこで,当院の不妊症患者208名を対象に,Pittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)を用いて睡眠の状況を調査した.PSQI総合得点5点以下を“good”,6-8点を“fair”,9点 以上を“poor”とし,各群と受精率,胚盤胞発生率と比較した.その結果,受精率において3群間に有意な差 が見られ,特に“poor”群で有意に受精率が低かった(p<0.05).胚盤胞発生率と良好胚盤胞(≧G3BB)率 ではいずれの群間にも有意差はなかったが,睡眠の質が上昇するに従い上昇傾向にあった.また,受精率を エンドポイントとした多変量解析では,アルコールの摂取と睡眠の質が受精率と関連する独立した因子と 考えられた(p<0.05).これらのことにより,睡眠の質や生活環境は受精率に影響するものと考えられた.