Papers and Abstracts

論文・講演抄録

検卵時における培養液中の温度変化について

学術集会 一般演題(ポスターセッション)

2017年度 学術集会 一般演題(ポスターセッション)

発表者:山田 健市・菊地 裕幸・若生 麻美・菅野 弘基・岸田 拓磨・岸田 理英・佐藤 那美・馬場 由佳・結城 笑香・吉田 仁秋

仙台ART クリニック

Abstract

【目的】
卵子,胚における温度低下は,紡錘体の不可逆的な形状変化を起こすことが報告されており,高温下では変性を招く可能性がある.
そのため,検卵,培養時における培養液中の温度を適温に保つことは卵子,胚にとって非常に重要である.
当院では検卵時,卵子をパスツールピペットでピックアップするため,37℃の気温下で実施しない限り温度低下は免れない.
そこで,本研究では検卵時で使用される事が多い60mm,90mmディッシュの温度変化について,また,ピペット内で卵子を保持した場合と,ディッシュにプールさせた場合の温度変化に着目し,比較検討を行うことを目的とした.

【方法】
37.5℃に設定したウォームプレート上に,対象のディッシュを置き,事前に37℃に加温していた培養液を入れ,直後,1,3,5,10分後に培養液の温度を測定した.
検討1では,60mm,90mmディッシュに培養液5mlおよび10mlをそれぞれ入れ温度を測定した.
検討2では,パスツールピペットに培養液少量を吸引した場合と,プール用として35mmディッシュに培養液5ml 入れ,蓋ありとなしで培養液の温度を測定した.

【結果】
検討1:測定開始直後,1,3,5,10分後の培養液における平均温度は,60mmディッシュ;5mlでは,36.4,34.0,32.3,31.6,31.1℃となり,10mlでは,36.7,35.6,33.4,32.2,31.1℃となった.
また,90mm ディッシュ;5mlでは,32.7,29.8,29.4,28.5,28.4 ℃となり,10mlでは,34.2,31.9,30.2,29.6,28.3℃となった.
液量に関わらず90mmディッシュの方が温度は約2 ~ 3℃低下した.
検討2:ピペット内の培養液の温度は,27.1,25.9,25.4,26.0,26.3℃となり,35mm ディッシュ;5mlの蓋ありでは,36.6,36.4,36.1,35.7,35.7 ℃となり,蓋なしでは,36.9,36.2,35.0,34.2,33.2℃となった.
ピペット内の培養液温度が28℃以下と低下し,35mmディッシュで蓋をした場合,35℃以上の温度を保つことができた.

【考察】
ディッシュの径に関わらず培養液10mlに対し,5mlは温度が低下したことから,放熱量が増加し,37.5℃設定のウォームプレートでは温度が低下したと考えられる.
さらに,底面積が広い90mmディッシュも同様に温度の低下が認められた.
ピペット内の培養液温度の低下が著しいことから,ピペットでの操作は可能な限り迅速に行い,加温された培養液へ速やかに卵子を移動する必要があることが分かった.
インキュベーターの開閉頻度の増加は,庫内の温度や気相の変化もあることから,最も温度を保つことができる35mmディッシュ蓋ありでプールすることが温度の低下防止に役立つと考えられる.

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