新鮮および凍結融解精子を用いた ICSI 施行後の胚発生能の比較
2017年度 学術集会 一般演題(ポスターセッション)
発表者:小川 尚子・沖村 匡史・金子 繁・黒田 知子・内山 一男・小林 保・加藤 恵一
加藤レディスクリニック
Abstract
【目的】
IVF 治療における本人確認の必要性に関する観点から,自宅採精,持ち込みの廃止が検討されつつあり,採卵当日に採精が不可能である場合は,事前の精子凍結を行うこととなる.
WHO 基準で精液所見が正常であれば,凍結融解が及ぼす精子への影響は少ないと予測される.
しかしながら,新鮮および凍結精子を用いた場合の臨床成績について大規模な検討を行った報告が少ないため,本研究において後方視的に比較検討を行った.
【方法】
当院を受診した39歳以下の精液所見が正常(WHO 基準)でありICSIを施行した患者で,新鮮精子( n=7162)および凍結融解精子を用いた群(n=2430)における受精率,異常受精率,分割率,胚盤胞発生率,単一凍結融解胚盤胞移植後の妊娠率,生産率および児の先天異常について比較した(2009年1月から2015年12月).
また,同精液所見で精子を凍結保存した患者において,凍結融解が及ぼす媒精方法への影響について検討した(2015年4月から2016年12月).
【結果】
新鮮精子群,および凍結精子群の受精率,異常受精率,分割率および胚盤胞発生率はそれぞれ87.9%(6293/7162)および86.7%(2106/2430),3.1%(222/7162)および2.4%(57/2430),98.5%(5978/6078)および98.5%(2018/2049),65.3%(2416/3699)および67.0%(798/1192)であった.
臨床妊娠率(GS),生産率および児の先天異常率はそれぞれ,53.9%(933/1730)および51.4 %(292/568),41.7%(721/1730)および38.9 %(221/568),1.6%(27/1730)および1.1%(6/568)であり,すべてにおいて有意な差は認められなかった.
また,61.6%(779/1264)のcIVF 予定患者が精子の凍結融解後に,ICSI 適応となり,その主な理由として凍結融解による運動精子数の減少が挙げられた.
【結論】
精液所見が正常でcIVF 適応であっても,凍結融解処理を行うことにより,運動精子数が減少しICSI 適応となるケースが多い.
これは,凍結融解処理による影響と考えられ,精子の凍結保存法の改良が必要と考えられる.
しかし,ICSI 適応となった場合でも,臨床成績は新鮮精子と同等であることから,cIVF 予定患者が精子を凍結する場合は,十分な説明により同意を得る必要がある.