Papers and Abstracts

論文・講演抄録

新たな精子調整液を用いた授精方法別の胚発育の検討

学術集会 一般演題(ポスターセッション)

2017年度 学術集会 一般演題(ポスターセッション)

発表者:山下 奈緒美1)・永田 弓美子1)・矢田 咲子1)・佐藤 学1)・橋本 周1)・中岡 義晴1)・森本 義晴2)

1)IVFなんばクリニック
2) HORACグランフロント大阪クリニック

Abstract

【目的】
現在,当院では体外受精の精子調整に密度勾配遠心法を行っており,試薬にIsolate(Irvine)を用いている.
生体内での精子の生理環境を模したGradient SystemTM(Origio)を用いて,conventional-IVF( 以下c-IVF),又はICSIを施行し,それぞれの培養成績の比較検討を行った.

【方法】
2015年10月から2016年2月に当院で体外受精を行った123症例1,553個の卵子を対象とした.
Isolate又はGradientを用いて二層法による密度勾配遠心法で300g ,20分実施後,ペレットを培養液に懸濁し,10分間遠心洗浄処理を行った.
swim-up( c-IVF:30分間,ICSI:5分間)を行い,精子を回収,媒精濃度150万/mLでのc-IVF,又はICSIを実施した.
培養胚は分割期,又は胚盤胞期にて移植・凍結に用いた.まず,(1)精子調整液毎に分け,培養成績の比較を行った.
更に,授精方法別〔(2)c-IVF(57症例772個)(3)ICS(I 66症例781個)〕での精子調整液毎に分け,それぞれの受精率・分割率・Day5胚盤胞率・Day5良好胚盤胞率(Gardner
分類3BB 以上)を比較した.

【結果】
(1)精子調整液毎の成績: 分割率では差はなかったが,受精率[Isolate群:77.4%(419/541) vs. Gradient 群:73.2 %(616/841),p <0.01]においてIsolate 群で高く,Day5胚盤胞率[42.3%(101/239) vs. 59.0%(252/427),p<0.01],Day5良好胚盤胞率[12.1%(29/239) vs. 19.2%(82/427),p<0.05]においてGradient 群で高くなった.
(2)c-IVF: 全ての検討項目で差はなかった.
(3)ICSI: 受精率,分割率で差はなかったが,Day5胚盤胞率[39.2%(58/148)vs. 61.9%(146/236),p<0.05] ,Day5良好胚盤胞率[9.5%(14/148)vs. 16.9(40/236),p<0.05]においてGradient 群で高くなった.

【考察】
GradientのpHは精液のpHに近い為,精子処理から回収時・c-IVF・ICSI 施行時までの精子の状態を生理的に良好な状態に保つことができるという利点がある.
その為,精子調整後に回収した精子の正常形態率が増加した可能性がある.

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