採卵時GV期卵子由来胚盤胞の凍 結融解胚移植
2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:長瀬 祐樹1)・友成 美希1)・和田 知久1)・山本 佑司1)・米澤 潤一1)・勝又 綾子1)・後藤 愛架1)・田島 和弥1)・菊池 卓2)・松浦 俊樹2)
1) アクトタワークリニック生殖発生医科学センター
2) アクトタワークリニック
Abstract
【目的】
当院ではクロミフェンやレトロゾールを用いた低刺激排卵誘発周期で採卵を行っている.
採卵時は発育が不十分な卵胞も穿刺するため,獲得卵子の5 ~ 10%でGV 期卵子が得られている.
我々は得られた卵子を1つでも多く治療へ生かすため,体外成熟- 顕微授精(IVM-ICSI)を行い,身体への負担の少ない低刺激排卵誘発を行いつつも,採卵あたりの移植できる胚の数を増加させ,妊娠率を向上させてきた.
今回は,採卵時GV 期卵子の成熟から胚盤胞凍結まで,さらにはGV 期卵由来の胚盤胞移植についてまとめたので報告する.
【方法】
インフォームドコンセントの得られた,2013年9月から2017年5月までに当院で採卵を行った患者を対象とした.
GV 期卵子が得られた366症例486周期(平均年齢36.1歳)について,当院プロトコルに従いIVM-ICSIを施行.IVM 後に極体放出が確認できたものを成熟と判断し,ICSI 翌日に2PNが確認できた胚を正常受精と判断した.
その後は通常の胚と同様に胚盤胞まで培養し,ガードナー分類でBC 以上の胚を良好胚として,超急速ガラス化凍結法にて凍結した.
凍結融解胚移植周期は自然周期で行い,当院プロトコルに従い予測排卵日から起算して3w5dにβhCGを測定し着床判定,5w5dに胎嚢確認を行い臨床妊娠を判断し,着床率,臨床妊娠率,流産率を検討した.
【結果】
対象期間中にIVMを施行したGV 期卵子は739個であり,成熟率は70.1%であった.
518個ICSIを施行し,正常受精率は73.1%(379/518)で,良好胚凍結率は22.5%(81/360)であった.
同時期の採卵時MⅡ卵子の成績は,正常受精率79.4%,良好胚凍結率57.1%で,正常受精率及び良好胚凍結率ともにIVM-ICSIが有意に低下することが確認できた.
凍結融解胚移植は48周期(平均年齢35.9歳)行い,着床率は68.7%(33/48),臨床妊娠率は50%(24/48),流産率は8. 3%(2/24)であった.
同時期のMⅡ卵子由来胚盤胞移植結果は,着床率62.7%,臨床妊娠率59.8%,流産率17.2%で,妊娠率及び流産率に有意な差は認められなかった.
またGV 期由来胚盤胞移植後の妊娠経過については,出産報告確認済が12例,妊娠継続中が8例,報告確認未が2例あった.
平均出生時体重3,124g,平均在胎日数271.4日で,1例のみ30w3dで帝王切開にて出産の報告があったが,その他の低体重児や早産の報告はされていない.
【考察】
採卵時GV 期卵子では良好胚盤胞凍結率は低いが,良好胚凍結した胚を融解胚移植した場合の妊娠率の低下や流産率の上昇は確認できなかった.
また,妊娠継続した場合の出産への影響も今のところ報告されていないため,IVM-ICSIは妊娠成立に有効な手段であることが示唆された.