Papers and Abstracts

論文・講演抄録

採卵時に未熟卵であった症例の臨 床成績について

学術集会 一般演題(口頭発表)

2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:人見 裕子・野々口 耕介・木下 勝治・田中 亜理佐・西村 美希・田畑 慧・田村 出・山口 剛史・石川 弘伸・渡邉 由美子・渡邉 浩彦

醍醐渡辺クリニック

Abstract

【目的】

体外受精では採卵時にMⅡ卵を得るのを目的に卵巣刺激を行っているが,自然周期などではLH サージを監視することが難しく採卵日を決めるのに苦慮することがある.特に患者の高齢化で発育卵胞数が少なく主席卵胞が1つである場合,MⅡ卵が取れないこともある.体外成熟の技術は進歩しているがMⅡ卵と比較すればその成績は低いのが現状である.そこで当院で採卵数が1個である症例でMⅡ卵が採取できずMⅠ卵またはGV卵の未熟卵であった症例について,その後の臨床成績などについて後方視野的に検討した.

【方法】

2014年と2015年の2年間の採卵のなかで採卵数が1個の症例のうち未熟卵子に対し,体外成熟を行った症例についてMⅠ卵,GV卵それぞれで成熟率,ICSIの受精率,胚盤胞到達率,臨床妊娠率などについて同じく採卵数が1個でMⅡ卵であった症例と比較した.

【結果】

2年間の採卵数3,383周期のうち採卵数が1個であった症例は変性卵などを除くと576周期でMⅡ卵が466周期,MⅠ卵が82周期,GV卵が28周期であった.
平均年齢はMⅡ卵で41.8歳,MⅠ卵で42.6歳,GV卵で42.6歳と各群に有意差はなかった.成熟率は採卵日にMⅡ卵になったものはMⅠ卵で26周期(31. 7%),GV卵で1周期(3. 5%).翌日にMⅡ卵になったのはMⅠ卵で39周期(47.6%),GV卵で20周期(71.4%).2日後にMⅡ卵になったのはMⅠ卵で2周期(2.4%),GV卵で2周期(7%)であった.
体外成熟でもMⅡ卵にならずキャンセルになったのはMⅠ卵で15周期(18.3%),GV卵で5周期(17.8%)であった.受精率は採卵時にMⅡ卵が77.1%,MⅠ卵で46.8%,GV卵で40.9%だったが異常受精率はMⅡ卵で9.7%,MⅠ卵で3.2%,GV卵で27.3%であった.胚盤胞到達率はMⅡ卵で32.9%,MⅠ卵で13.8%,GV卵で22.2%だった.臨床妊娠率は新鮮胚移植あたりでは,MⅡ卵で44.7%,MⅠ卵で25%,GV卵では確認できなかった.流産率はMⅡ卵で22.2%,MⅠ卵で100%であった.

【考察】

採卵時に未熟卵であった卵子はMⅡ卵と比較すると,検討したパラメーターすべてにおいて低い結果となった.新鮮胚ではなかったがGV卵において1例,凍結胚移植で出産まで至った症例があった.しかしその症例も患者年齢が31歳であったことから採卵の割合を多く占める40歳以上で特に主席卵胞が1つしかない症例では採卵時にMⅡ卵を確保することが重要であると示唆された.

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