Papers and Abstracts

論文・講演抄録

採卵後5日目の初期胚盤胞を黄 体期4日目に単一融解胚移植した 妊娠率について

学術集会 一般演題(口頭発表)

2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:魚住 卓矢・古橋 孝祐・辻 優大・大月 純子・岩﨑 利郎・伊藤 宏一・水澤 友利・松本 由紀子・苔口 昭次・塩谷 雅英

英ウィメンズクリニック

Abstract

【目的】

採卵後6日目(Day6)に得られた胚盤胞を凍結保存し,次周期以降の黄体期5日目(Luteal 5)に融解胚移植を行うことで,着床率が向上することが報告されている(Mukaida et al., 2003).この報告は,妊娠成立において子宮内膜と胚の状態を同期させることの重要性を示す
知見である.そこで本研究では,初期胚盤胞(G1,G2)を発生が遅延している胚と捉え,従来通りLuteal 5 に融解移植するよりもLuteal 4に融解胚移植を実施した方が,妊娠率が向上する可能性があると考え,前方視的検討を行った.

【方法】

2015年3月から2016年3月までにホルモン補充周期で単一融解胚移植を実施した症例のうち,凍結時(Day5)にG1,G2 であった周期を対象とした. 患者ID の末尾が奇数であった333症例 (G1:114症例,G2:219症例) には従来通りLuteal 5に融解胚移植を実施し,末尾が偶数であった153症例( G1:61症例,G2:92症例) には研究への同意を得たうえで,Luteal 4 に融解胚移植を実施した.なお,全ての症例に対し,胚の融解直後にレーザー光照射による補助孵化療法を施行した.検討項目として,各移植群から得られた臨床妊娠(GS)率,ならびに胎児心拍(FHB)率について比較検討を行った.

【結果】

移植時の年齢はG1 のLutea l 5 とLutea l 4,G2 のLutea l 5とLuteal 4で36.9±4.8歳および37.8±4.9歳,ならびに37.1±4.4歳および36.6±3.9歳であり,有意な差は認められなかった(p=0.48)
G1 の胚盤胞をLuteal 5 とLuteal 4 に移植したGS 率(21.9% vs24.6%; p=0.69), およびFHB 率(16.7% vs 19.7%; p=0.62) は,Luteal 4 に移植した群が高い傾向にあったが,各群間に有意な差は認められなかった.G2の胚盤胞をLuteal 5とLuteal 4 に移植したGS 率
(32.9% vs 41.3%; p=0.16),およびFHB 率(28.3% vs 35.9%; p=0.18)は,同様にLuteal 4 に移植した群が高い傾向にあったが,各群間に有意な差は認められなかった.

【考察】

採卵後5日目に凍結したG1およびG2 の初期胚盤胞は,Luteal 5で融解移植するよりも,Luteal 4 に融解移植することで治療成績が向上する可能性が示唆された.今後,より詳細な検討ならびに解析を行うことで,初期胚盤胞の最適な移植時期の特定を目指す.

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