愛媛県におけるがん・生殖医療の現状
2018年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:大橋 いく子1)・景浦 瑠美1)・小泉 あずさ1)・徳本 愛佳1)・平尾 綾子1)・矢野 浩史1)・杉山 隆2)
1)矢野産婦人科
2)愛媛大学医学部産婦人科
Abstract
がん患者の予後向上に伴い、QOL改善として妊孕性温存は重要な課題である。挙児の可能性を喪失する精神的ショックは、がん治療に対する意欲を無くし、生きる希望も失いかねない。当院は2007年から日本A-PARTによる「血液疾患未婚患者における卵子採取ならびに凍結保存」の臨床応用に参加し、がん生殖医療に取り組んできた。未婚者には卵子の、既婚者には受精卵の凍結保存(保存)を行っている。未婚者は白血病、MDSなどの血液疾患、既婚者は乳がんがほとんどであり、一組の乳がん患者夫婦に児が得られている。
最近のがん治療の進歩は目覚しく、更に卵巣組織の新たな凍結融解技術の登場により、多くのサバイバーががん・生殖医療の恩恵を受ける事となった。また、2017年に発刊された「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関するガイドライン(日本癌治療学会)」は、がん専門医にとって、がん生殖医療は不可避なものとなった。個々の施設の努力だけでは、がん生殖医療には対応できない。地域で対象となるがん患者に適切な情報を提供して効率的な医療を提供するためには、多施設にわたるがん専門医と生殖医療専門医との連携が必要であり、全国的にネットワークの構築が始まっている。愛媛県では愛媛がん生殖医療ネットワーク(Ehime Oncofertility Network: EON)(代表:愛媛大学杉山隆教授)が立ち上がり活動を始めた。愛媛県におけるがん生殖医療の現状について報告する。