Papers and Abstracts

論文・講演抄録

患者様の治療を中断させないサポート

吉田 淳

2023年度 年次大会-講演抄録シンポジウム1:患者様の治療を中断させないサポート

学会講師:吉田 淳

Abstract

体外受精などの保険適応が2022年4月に開始してから、卵巣機能がいい人には、患者さんの身体にフレンドリーなゴナールFとフェマーラを使用した中刺激法を第一選択としている。具体的には、月経3日目からフェマーラ1錠を5日間使用、ゴナールFの注射は月経3日目、4日目、6日目、8日目に112.5単位を使用、月経9日目に超音波検査とホルモン検査を行って、その結果からその後のゴナールFの注射の量と使用する日を決定している。トリガーにはhCG5000単位を使用している。この卵巣刺激法を選択すると、卵巣の腫れがひどくない時には、新鮮胚移植を実施することができる。当院における新鮮胚移植の割合は保険適応開始前が24.6%、開始後が34.0%であった。また、排卵誘発剤の注射は、保険適応前は主にフェリングを使用していたが、保険適応後は主にゴナールFを使用している。卵巣刺激法に高刺激を選択した時は、ゴナールF+クロミッド法またはゴナールF+ヒスロン法を主に行なっている。原則的にゴナールFは月経3日目から毎日使用、クロミッドまたはヒスロンは月経5日目から使用する。AFC(胞状卵胞数)によってゴナールFの注射の量を決定している。また卵巣刺激開始約5日後の卵胞の成長とホルモン検査の結果から、注射の量は調節している。
ARTを行なって妊娠判定が陰性でしたとのみ伝えたのでは、患者さんは真っ暗になってしまう。まず卵巣刺激法やホルモンの推移と成長した卵胞数、卵子回収率、受精率、分割率、胚盤胞到達率などの結果の説明を再度した後、次回のチャレンジに向けてどのような戦略で行くかの説明をしている。具体的には、良好な胚が獲得できなかったときには、卵巣刺激法を変更している。卵胞が多数発育しているにも関わらず卵子回収率や成熟率が低率な時は、デュアルトリガーを行い、トリガーから採卵までの時間も長くしている。デュアルトリガーとトリガーから採卵までの時間を長くすることで、卵子回収率および顕微授精後の受精率が改善することがある。2回胚移植を行なっても着床が成立しない時は、子宮内細菌叢検査、子宮内膜受容能検査、子宮鏡を行なっている。2回の着床障害や2回の流産の既往があるときは、PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)を考慮してる。また、高度乏精子症で射出精液中に良好な精子が得られない時は、精巣内精子採取術を実施して精巣精子で顕微授精を行うこともある。卵子の質が悪い時には、栄養解析を行って不足している栄養素を選択的に補充する個別のサプリメント補充を実施する場合もある。
最後になるが、私が医療人として常に心がけていることは、患者さんと同じ目線で、患者さんに寄り添って、診察をすることである。

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