患者アンケート結果から見る胚培 養士説明のありかた
2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:岸田 理英・菊地 裕幸・山田 健市・若生 麻美・菅野 弘基・岸田 拓磨・佐藤 那美・馬場 由佳・結城 笑香・吉田 仁秋
仙台ART クリニック
Abstract
【目的】
当院ではARTスタート前のIVF 説明会や採卵後に,胚培養士が卵子や受精方法などについて説明を実施しており,2016年11月からは移植や凍結胚の決定をする採卵3日後に,患者本人の胚発育状況の説明を始めた.
今回,採卵3日後の説明開始と同時に,患者の治療内容の理解度がどの程度あるのかをアンケート調査し,今後の胚培養士説明をどのように実施していくかを検討,考察した.
【方法】
2016年11月から12月の期間,当院にて初めて採卵を経験した患者(以下,未経験者)51名,以前に採卵を経験したことのある患者(以下,経験者)49名に対し,採卵3日後に移植や凍結胚の決定目的で来院した際,アンケート調査を実施した(回収率 100%).
調査内容は,IVF 説明会(以下,セミナー),採卵後説明(以下,OPU 後),採卵3日後来院説明(以下,D3来院)の各タイミングで,患者がどの程度理解があるのかを4段階で評価してもらった.
さらに,胚培養士からの説明が自身の治療に役立ったかを調査した.
なお移植や凍結胚の決定は,胚培養士説明の後,医師との相談で決定している.
【結果】
未経験者・経験者ともに,全ての説明項目で最初のセミナー時の理解度は50% 以下だったが,OPU 後,D3来院と繰り返し説明を実施することで約80%以上に上昇した.
しかし,経験者のD3来院の理解度はOPU後と比較し,若干低下した.胚培養士説明が自身の治療に役立ったかの設問では,未経験者・経験者ともに約90%で「役に立った」と回答した.
また経験者に対し,D3来院説明を実施していなかった以前と比較して理解度の向上があったかを質問したところ,約80%で「以前よりも理解した」との回答が得られたが,『分割期移植をするか,胚盤胞移植をするか判断する材料がもう少し欲しい』『自分の胚への具体的なアドバイスが欲しかった』などの要望もあった.
【考察】
繰り返し説明を実施することで理解度が上昇し,胚培養士説明が患者の治療において有益であることが明確となった.
経験者ではD3来院の理解度がOPU 後と比較して若干の低下が見られたが,未回答者も増加したことから,胚培養士が経験者へ説明の一部を省略する場合があることが原因として考えられた.
また,D3来院で患者自身の胚について説明することで,以前よりも理解度は上昇したが,質問内容が未経験者と比較してより専門的で,具体的な回答を求める傾向があった.
このことから,マニュアル通りの説明では患者の理解や納得は得られないことを十分に認識する必要があると感じた.
さらに,一人の患者に長時間を費やすことは難しく,いかに分かり易く端的に説明を行えるかを考えたとき,分かり易い資料の作成などが必要と考える.
今回のアンケート結果から,培養3日目の胚の細胞数別胚盤胞到達率のデータを説明に用いることで患者から高評価を得ている.