Papers and Abstracts

論文・講演抄録

当院における年齢別SEET法実施妊娠成績

学術集会 一般演題(ポスターセッション)

2017年度 学術集会 一般演題(ポスターセッション)

発表者:荒井 勇輝・石川 聖華・中山 順樹・向江 真璃・佐久間 友香・加賀 朝子・毛利 汐菜・原 利夫

はらメディカルクリニック

Abstract

【はじめに】
体外受精において,胚移植を成功に導くための条件の1つに,胚受容能を獲得した子宮内膜の存在がある.
胚の着床の成功のためには,胚と子宮内膜のシグナル交換(クロストーク)が必要であり,それにより着床の準備が進むと考えられている.
しかし,体外受精では体外で胚を培養しているため,胚移植がなされて初めて胚と子宮内膜のクロストークがスタートする.
つまり,胚移植時は子宮内膜の着床の準備が不完全な状態であると考えられる.
そこで,胚受容能獲得のため胚移植の2 ~ 3日前に胚由来因子が含まれている培養上清を子宮内に注入することで,子宮内膜を刺激し,着床の準備を促進させるSEET 法が開発された.
当院では,胚盤胞凍結時に使用していた培養上清を用いたSEET 法と,培養に使用していない培養液GM601 Culture( GYNEMED)を用いた簡易SEET法を実施している.
今回,当院におけるSEET 法の実施別の妊娠率について比較を行ったので報告する.

【方法】
2016年1月から12月までに胚移植を行った1,121周期を対象とした.
媒精後,Global Total( Life Global)を用いて5日または6日間培養し,Gardner 分類で胚盤胞4BC以上のものを凍結する際に培養上清(SEET液)を約30μL回収し,-20℃で凍結保存した.
SEET 法は,胚移植を行う2-3日前に血中プロゲステロン濃度10.0ng/mL 以上あることを確認した後,SEET 液を37℃で融解し,GM601 Cultureと混合したものをS 群,GM601 Cultureのみを使用する群を簡易群とし,いずれも0.2mLに調整しIUIカテーテルを用い子宮内へ注入した.

【結果】
31歳までのS 群の妊娠率は44.4%,簡易群では22.7%であった.
32~ 34歳ではS 群が32.1%, 簡易群が27.8%,35 ~ 37歳ではS 群が24.0%, 簡易群が18.4%,38 ~ 40歳ではS 群が26.9%, 簡易群が25.8%,41 ~ 43歳ではS 群が14.4%,簡易群が16.9%,44歳以上ではS群が7.1%,簡易群が6.9%であった.

【考察】
41 ~ 43歳までの妊娠率はS 群で14.4%,簡易群では16.9%と,簡易群の方が高くなったが,その他の年齢層ではS 群の方が高い妊娠率が得られた.
しかし,どちらにおいても有意な差は認められなかった.
現在,培養上清には着床に関与するリゾホスファチジン酸が含まれているとの報告があり,他にも多くの胚由来因子および内膜刺激因子が含まれていると考えられる.
今回の検討では,S 群と簡易群とで妊娠率に差がなかったことから,培養液もしくはIUI カテーテルを挿入することが子宮内膜を刺激し着床に有利に働いたのではないかと考えられる.今後,子宮内膜スクラッチ法等も検討を加え,子宮内膜応答と着床率の関係を明らかにしたい.

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