当院における初診患者の受診1年後の転帰
2017年度 学術集会 一般演題(ポスターセッション)
発表者:饒平名 里美1)・一色 納菜子1)・小林 亮太1)・水野 里志1)・井田 守1)・福田 愛作1)・森本 義晴2)
1)IVF大阪クリニック
2) HORACグランフロント大阪クリニック
Abstract
【目的】
近年,女性の社会進出に伴う晩婚化や生活習慣などの要因から,不妊治療を受ける患者は年々増加している.
当院の妊娠による卒業者数は年間約800組に上るが,その治療期間や治療方法は様々である.
一方で長期にわたり治療を繰り返す患者も多く,治療長期化は患者の経済的および精神的な負担を増加させている.
これまで治療開始から妊娠卒業までに要した期間を調査した報告はあるが,特定の期間内における初診患者の治療の転帰を調査した報告は少ない.
そこで,我々は一定期間内の治療転帰を年齢および方法別に比較検討した.
【方法】
2015年4月~ 2016年3月の初診患者1,293組を調査対象とした.
初診年齢をA 群:29歳以下,B 群:30歳~ 34歳以下,C 群:35歳~ 39歳以下,D 群:40歳以上の4群に分類し初診日から一年間の治療歴を比較した.
治療は一般不妊治療(タイミング療法・人工授精)および体外受精に分け,総来院回数が5回未満の患者はドロップアウト症例と判断した.
またタイミング療法は,超音波検査を実施し医師の指導のもと夫婦生活を持った周期とした.
【結果】
各年齢層が占める割合はA 群:12.5%,B 群:33.0%,C 群:34.2%,D 群:20.4%, 治療の継続率はA 群:78.9%,B 群:84.3%,C 群:88.0%,D 群:81.1%であった.
一般不妊治療を実施した661組のうち138組が妊娠卒業し, 卒業率はA 群:28.9%,B 群:24.4%,C 群:18.3%,D 群:4.6%でD 群において有意に低かった(P<0.05).
一方,体外受精を実施した患者は522組,胚移植を実施した453組のうち185組が妊娠卒業した.
卒業率はA 群:47.2 %,B 群:50.4 %,C 群:42.3 %,D 群:13.7 %でD 群において有意に低かった(P<0.05).
また,体外受精の卒業率(35.4%)は一般不妊治療(15.3%)に比べ有意に高かった(P<0.001).
全ての治療を合わせた卒業率はA 群:35.4 % ,B 群:35.7%,C 群:31.9 %,D 群:12.1 %であった.
【考察】
年齢層別患者数はB・C 群が多く,治療を継続した患者の割合はC 群において最も高いことから35 ~ 39歳が積極的に治療に取り組む年齢層であると考えられる.
また,一般不妊治療と体外受精の卒業率はどちらもD 群において有意に低く,日本産婦人科学会のデータと同様の傾向を認めた.
この結果から一般不妊治療,体外受精ともに妊娠成立は女性患者年齢に依存している.
一方,全ての治療をあわせた卒業率はA 群・B 群・C 群では差を認めなかったことから不妊治療は39歳までに終了することが望ましい.
またいずれの年齢においても体外受精の卒業率の方が一般不妊治療より高率であるので,妊娠を急ぐ場合は体外受精を受けることが早道と考えられる.