当院において独自開発したシステ ム運用の効果 ー培養士の視点からー
2016年度 学術集会 一般演題(ポスターセッション)
発表者:髙木 さや香・藤田 智久・中山 理紗・石上 夕紀子・望月 汐美・清水 菜穂・青島 和沙・植田 健介・宗 修平・山口 和香佐・俵 史子
俵IVFクリニック
Abstract
【目的】
遺伝的情報や胚のタイムラプスデータなど情報の種類が多様化する中で,これをどのように管理・活用していくかは,生殖医療機関の大きな課題であるとともに,自院に適した情報の管理方法を考えていくことはとても重要である.当院は2015年3月の移転を機にシステムロード社の『RACCO 電子カルテシステム』を導入した.本システムはデータベースとして優れた機能を持つファイルメーカー(FM)をベースとした『ART 記録管理システム(FFM)』と連動し,電子カルテでは管理が難しかった幅広いART 情報を管理可能で且つ,カスタマイズも容易であり,自院に適した形で情報を管理可能である.今回,本システムの導入から1年が経過し,培養士の視点から情報管理の重要性やデータベースの作成方法,実際の使用感について報告する.
【方法】
FileMaker13を使用し,FFMとリンクする方法で,培養業務に合わせカスタマイズや修正を行い,当院スタッフで独自のシステムを構築した.
【結果】
培養記録の入力は培養業務と並行して行うため,出来るだけ簡単かつ正確に情報を記録することが求められる.培養業務はルーチン業務が多く入力項目をチェックボックスやリスト形式にすることが可能なため,当院では”記述項目”を極力減らし,可能な限り”選択項目”を増やした.選択式にすることで,のちに情報の抽出と二次利用が容易となる.胚の画像管理方法では,撮影画像のファイル名を「患者ID+日付」で統一し,院内PCとネットワークでつなぐことで,該当胚の画像を院内ネットワーク下のPCであれば,どこからでも閲覧できるようにした.上述の入力情報は患者への報告書作成時に日常的に利用される.以前は状況に応じた報告書を文書作成ソフトで管理しており,作成時に内容を報告書テンプレートへ手動で転記していた.これらの報告書テンプレートをFMで管理することで,報告書が選択された時点で胚画像を含む必要情報を全て自動で転記されるように構築した.本システムを用いることで,培養業務に携わらない培養アシスタントでも培養報告書を作成出来るようになった.また,当院オリジナルのFMデータベースとして凍結保存胚の1年更新の際に対象者を抽出し,更新の手紙を作成するシステムを構築した.この業務は労力の大きなものであったが,本システムの採用により負担が大きく軽減したと感じている.
【考察】
システム移行の準備や移行直後は大きな労力を必要としたが,システム導入1年を経て,確実に培養士の業務の負担は軽減し,転記ミスなどの人為的過誤がなくなった.また,培養条件や移植結果の情報は二次的利用が容易な形で蓄積されるようになり,今後は後方視的な研究により素早く診療にフィードバックできると考える.