当クリニックにおける10年間の人工授精(21,606周期)の検討
2019年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:前島 澪・岡部 美紀・中野 俊・明石 佐奈子・山内 久美子・塩谷 仁之・東野 志保・杉浦 朝治・小島 勝志・藤田 真紀・髙橋 敬一
髙橋ウイメンズクリニック
Abstract
【目的】
人工授精(AIH)は, 不妊治療において比較的低コスト・低リスクで 実施することが可能である為, 体外受精へ移行する前段階に多くの不 妊カップルに選択される治療法であるが,AIHの必要性や実施回数に ついては多くの議論がされている.今回当院で施行した10年間のAIH 症例の成績をまとめ, 妊娠例と非妊娠例について妻年齢・AIH 施行回 数・精液所見の視点から検討を行った.
【方法】
2009年1月から2018年12月までの10年間に, 当院で人工授精を行っ た 21,606周期(平均年齢36.1±4.4歳)を対象とした.精子調整には複層密度勾配遠心法を用いた.統計解析にはt 検定で行い,p<0.05を 有意差ありとした.
【結果】
妊娠例は1,425例あり, 妊娠率は周期あたり6.6%であった.妻の年 齢別の妊娠率は 30歳未満では 9.5%(150/1579),30 ~ 35歳未満では8.8%(560/6346),35 ~ 40歳未満では6.7%(86/8702),40歳以上では2.5%(125/4934)となった.妊娠例の周期の平均回数は 2.8±2.8回であ り,累積妊娠率は 2回目で57.6%,3回目で73.0%,4回目で83.1%,5 回目で 90.0%,6回目で 94.7%となった.
妊娠例と非妊娠例において精液所見での検討では,精液量・処理後 回収率については有意な差は認められなかった.精子濃度・精子運動 率・総運動精子数では非妊娠群と比べ妊娠群が有意な差が認められた.
【結論】
妻年齢が高齢になるにつれAIHによる妊娠率は低くなり40歳以上で は 2.5%となった.また, これまでの報告にあるように累積妊娠率は 5 ~ 6回目には大きな変化が見られなくなった.妊娠例と非妊娠例では精子濃度・精子運動率・総運動精子数において有意な差が認められた.以上のことから, 妻年齢が高い症例や精液所見が悪い症例には AIHよりも高い妊娠率が獲得できる体外受精への早めのステップアップを勧 めることが推奨される.