Papers and Abstracts

論文・講演抄録

少数採卵症例における紡錘体観察 が受精および胚質に及ぼす影響

学術集会 一般演題(口頭発表)

2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:佃 笑美1)・松本 由香1)・佐藤 学1)・橋本 周1)・中岡 義晴1)・森本 義晴2)

1) IVFなんばクリニック
2) HORACグランフロント大阪クリニック

Abstract

【目的】

紡錘体可視化システムを用い非侵襲的にヒト卵子の紡錘体を観察できる.近年,紡錘体と受精率や胚質との関連が報告されている.また,卵子のエイジングに伴い紡錘体の伸長と面積増加が明らかとなっているが,年齢による紡錘体の可視とその後の発生については明らかとなっ
ていない.そこで今回Oosight Imaging Systemを用い,採卵数が少ない症例で年齢別に,紡錘体が受精率および胚質に影響するか後方視的に検討した.

【対象】

2013年2月から2016年6月にICSI 施行前に紡錘体の観察を行った
446症例632周期の1,133個のMⅡ卵子を対象とした.

【方法】

年齢39歳以下(A 群)と40歳以上(B 群)に分け,紡錘体可視率,紡錘体のレターダンスおよび長径,紡錘体可視と不可視での受精率と胚質,採卵時成熟卵子(体内成熟卵)と採卵時未熟で顕微授精までに成熟した卵子(体外成熟卵)の受精率と胚質との間に違いがあるか検討した.

【結果】

紡錘体可視と不可視の受精率(80.2 vs. 56.0)は可視の方が高かった(p<0.01).次に,紡錘体可視率は,A 群(75.3)とB 群(73.6)で差はなかったが,紡錘体のレターダンスはA 群(1.6nm)に比べB 群(1.5nm)で低かった(p<0.01).紡錘体の長径はA 群(12.2μm)に比べB 群(13.3μm)で長かった(p<0. 01).

A 群とB 群の受精率は,可視群と不可視群に分けても差はなかった.紡錘体可視の場合の両群の分割期胚での胚移植可能胚率(74.4 vs.76.8)と胚盤胞到達率(63.8 vs. 54.4)に差はなかった.不可視の場合の両群の分割期胚での胚移植可能胚率(66.7 vs. 72.8)と胚盤胞到達率(50.0 vs. 40.0)に差はなかった.
また,体内成熟卵の両群の可視率(82.8 vs.77.2)と体外成熟卵の両群の可視率(28.6 vs. 45.0)で成熟度での可視率に年齢による差はなかった.体内成熟卵の可視の場合の両群の受精率(82.9 vs.80.5)と分割期胚での胚移植可能胚率(75.2 vs. 77.4)で差はなかった.体外成熟卵の可視の場合の両群の受精率(62.5 vs. 55.6)と分割期での胚移植可能胚率(40.0 vs. 60.0)で差はなかった.不可視の場合も同様に年齢による差はなかった.

【考察】

少数採卵症例では,加齢により紡錘体のレターダンスは低下し,長径が長くなった.しかし,紡錘体の形態と胚質には関連がなかった.顕微授精前に紡錘体が可視化できる場合は,受精率は向上するが,可視不可視に関わらずその後の胚発生には影響しないと考えられた.

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