子宮内膜受容能検査補正後の着床不全から学んだ 個別化胚移植
2022年度 年次大会-講演抄録|シンポジウム3「これからのIVF-ET に必要な個別化治療」
学会講師:川井 清考
Abstract
着床不全の原因の多くは女性の年齢に起因する胚の異数性にあるとされている.しかし,反復着床不全では,そのほかの要素が関わっており,原因を特定し治療成績を向上させることは容易ではない.亀田IVFクリニック幕張において,2016 年5月開院時より2022年3月までに胚移植をおこなった患者別に妊娠継続群と不成功群を調査した.胚移植を実施した2,267名中,胚移植2 回までに1,141名(50.3%),3 回までに1307 名(57.8%)が妊娠継続転院していた.3 回胚移植をおこない不成功に終わった480 名のうち,反復流産患者は27名(5.6%),生化学妊娠+流産がtotal 3 回以上の不育症リスク患者は35 名(7. 3%)であり,一度も着床しなかった患者は178 名(37.1%)であった.3 回胚移植不成功に終わった患者のうち,4 回目以降に治療継続した367名では187名が妊娠継続転院となっている.3 回以上の反復着床不全を示す患者には,患者年齢以外にも子宮形態異常,甲状腺機能異常,夫婦染色体構造異常,先天性・後天性凝固素因,嗜好歴を含めた生活スタイル,BMI,PCOS,男性素因など不育症原因を共通して有する場合が多い.しかし,別途,着床不全原因と考えられている慢性子宮内膜炎・子宮内膜胚受容能異常,子宮内細菌叢異常などの因子が存在する.当院では,比較的早期より子宮内膜胚受容能検査を反復着床不全患者に実施してきた.2022年3月現在,370 名の患者に実施し,84 名(22.7%)に子宮内膜胚受容能検査後の黄体補充個別調整による着床不全改善が期待できる異常を認め,成績改善に寄与している(Pre-receptive 61名; 16.5%,Late Receptive
13 名; 3.5%,Post-receptive 10 名; 2.7%).しかし,近年の17件の研究(患者数7,052人,RCT 4件,コホート研究 13 件)のメタアナリシス(HP Tran, et al. F&SReviews. 2022)からもわかるように,子宮内膜胚受容能検査が反復着床不全患者の生殖医療成績の向上につながるかどうかは議論が分かれるところである.
子宮内膜胚受容能検査後の個別化胚移植を行い妊娠に至らなかった患者において,凝固治療・免疫治療などのアドオン治療の使用経験と治療成績について文献的考察を踏まえて報告する.