妊娠予測確率モデルの有用性の検討
2018年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:川原 結貴1)・平田 麗1)・井上 聖子1)・田口 可奈1)・新藤 知里1)・斉藤 寛恵1)・青井 陽子1)・川上 典子1)・羽原 俊宏1)・宮木 康成2)・林 伸旨1)
1)岡山二人クリニック
2)Medical Date Labo
Abstract
目的:早期の妊娠成立のためには、妊娠の可能性がより高い胚を選択して移植する必要がある。当院では、過去のデータをもとに胚盤胞融解移植の妊娠予測モデルを作成し、その有用性を検討した。
方法:2009年から2016年6月まで当院にて採卵し、融解移植した4717個の胚盤胞のデータをもとに妊娠予測確率関数を作成した。次に、このモデルの有用性を検証するために2016年7月から2017年12月までに単一胚盤胞融解移植を行った2092周期を対象とし、妊娠予測確率別の妊娠率及びグレード別の妊娠率を実際の妊娠率と比較した。また、妊娠予測確率の受診者動作特性(ROC)曲線の曲線下面積(AUC)を指標として、モデルを適用した場合と移植時胚グレード別の妊娠率を適用した場合との比較を、上記2092個の胚盤胞について行った。
結果:単変量解析で得られた妊娠関連因子は、胚盤胞直径、凍結時胚齢、移植回数、採卵時女性年齢、AMH、凍結時の胚グレード、採卵後3日目の胚グレード、採卵時女性BMIであった。これらの因子を用いて多変量ロジスティック回帰モデルにより妊娠予測確率関数を算出した。妊娠予測確率別と実際の妊娠率の検討では、予測確率0-10%: 9.3%, 10-20%: 14.9%, 20-30%: 31.1%, 30-40%: 48.2%, 40-50%: 58.2%, 50-60%: 61.9%, 60-70%: 66.4%, 70-80%: 70.5%, 80-90%: 64.5%, 90-100%: 87.5%で予測と実際はほぼ適合していた。また、グレード別に予測確率と実際の妊娠率の比較では、AA: 58.8% vs.65.2%, AB: 45.0% vs. 53.7%, BA: 47.6% vs. 58.1%, BB: 34.3% vs. 40.3%, AC: 32.6% vs. 34.8%, BC: 23.5% vs. 27.2%, CA: 36.9% vs. 50.0%, CB: 28.2% vs. 34.8%で、妊娠予測確率と実際の妊娠率はともに、Aグレードを含む胚では高く、Cグレードを含む胚では低い結果であった。妊娠予測確率関数を適用し妊娠を予測した場合のAUC は0.71, 95%信頼区間[CI] 0.69-0.73は、年齢および胚グレード別の妊娠率を適用した場合のAUC 0.66,95%CI : 0.63-0.68 よりも高値であった(p<0.0001)。
結論:過去のデータをもとに作成した妊娠予測モデルは実際の妊娠率とは強い相関にあり、グレード別の比較も同様であった。また、この予測モデルは女性年齢および胚グレードのみの妊娠率の予測よりも高い妊娠予測精度であることが示された。妊娠予測モデルを用いることにより、妊娠できる可能性の高い胚を選択することが可能となると考えられる。