多前核由来胚盤胞のNGSによる解析
2018年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:後藤 優介・寄田 朋子・渡邊 華・戸水 桐子・田口 新・原田 祐紀・福間 希衣・向田 哲規
広島HARTクリニック
Abstract
目的:受精確認時に前核が3個以上確認できる多前核胚については染色体の倍数性異常の可能性が高いことから、治療に用いないことが一般的であり当院でも同様の方針をとっている。しかしながら、培養を継続した場合、一定の割合で胚盤胞への発生を認めることがあり、形態学的に多前核を認めた胚においても染色体異常がない可能性ついては完全には否定できない。今回、患者から研究の同意の得られた多前核由来胚盤胞に対して、次世代シークエンサー(NGS:Next generation sequencer)を用いて解析を行ったので報告する。
方法:2016年9月~2018年4月までにIVFもしくはICSIを施行し、採卵翌日の受精確認時に多前核を認め、胚盤胞に発生した20症例21個の胚に対して、胚生研(biopsy)を行いNGSにより解析を行った。胚の培養にはPrimo Vision™( Vitrolife社)とEmbryoScope+( Vitrolife社)を用いた。多前核を認めた場合、正常受精卵と同様に培養を継続し、胚盤胞へ発生した胚についてbiopsyを行った。WGA,NGSに関しては外部の検査会社へ委託した。
結果:平均年齢は38.2歳だった。NGSによる解析の結果21個の胚のうちNormal-XYが14.3%(3/21)、Normal-XXが4.8%(1/21)、polyploid-XXYが28.6%(6/21)、Abnormal-XYが14.3(3/21)、Abnormal-XXが33.3%(7/21)、判定不能が4.8%(1/21)だった。
考察:NGSの解析では常染色体のコピー数が3(3倍体)であった場合でも、専用ソフトでの解析時に補正が入り3倍体と2倍体の区別はつかない為、Normalと結果がでた胚に関しても倍数性異常の可能性を完全に否定することはできない。しかしながら今回の検討により形態的に多前核を認めた胚の中にも正倍数性の胚が存在する可能性は十分に考えられた。これにより多前核胚でも移植をすることで挙児を得られる可能性はあるが、現在国内ではPGSは認められていない為、臨床上で多前核胚を解析したうえで治療に供することはできない。また3倍体の胚は胞状奇胎になる可能性もあり、臨床上の取り扱いには十分注意しなければならないと考えられる。倍数性の判定を行うためにはSNP arrayを用いることで判定も可能になる為、今後より詳細な検討を行っていきたい。