培養システムの異なるタイムラプ スインキュベーターによる胚発生 能の違い
2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:北山 静香1)・中野 達也1)・佐藤 学1)・中岡 義晴1)・森本 義晴2)
1) IVFなんばクリニック
2) HORACグランフロント大阪クリニック
Abstract
【目的】
近年,様々なタイムタプス観察ができるインキュベーターが開発,改良されている.また,インキュベーターごとに胚培養用Dishの種類や観察システムの仕様は異なる.しかしながら,インキュベーターごとの培養システムによる胚発生能の違いはわかっていない.当院でASTEC 社のiBISとVirtoLife 社のPrimo visionの2種類の異なるシステムのタイムラプスインキュベーターを用いて観察をしている.iBIS は無加湿型インキュベーターで培養 Dishは個別drop 培養となっている.Primo vision は加湿型インキュベーターで培養Dish はWell of the Well( WOW) Dishによる共培養となっている.また,使用する培養液量も異なり,個別drop 培養は30μl/1drop に1個,WOW Dishによる共培養は100μlに最大16個と設定している.そこで,本研究では2種類のタイムラプスインキュベーターによる胚培養が発生に及ぼす影響を後方視的に比較した.
【方法】
2016年1月~6月までに当院において低刺激周期または刺激周期で採卵し,採卵時母体年齢39歳以下及び採卵個数が10個以上24個以下の症例131周期(iBIS:99周期,Primo vision:32周期)を対象とした.受精確認後から培養を開始し,iBISで1,056個,Primo visionで372個を6日目の胚盤胞まで培養継続した.検討①では2群における移植可能分割期胚率,移植可能胚盤胞率を比較した.検討②では同一dropで培養する個数の影響を調べる為Primo Visionの共培養胚の個数を6個以下(Primo-6↓)と7個以上(Primo-7↑)に分け,2群における移植可能分割期胚率,移植可能胚盤胞率を比較した.
【結果】
各群間における平均年齢,平均採卵個数,顕微授精胚の割合に差はなかった.検討①:iBIS 群及びPrimo 群の移植可能分割期胚率(/ 受精卵)に差はなかった(77.7% vs. 77.2%).移植可能胚盤胞率(/移植可能分割期胚数) にも差はなかった(49.8% vs. 47.8%).検討②:移植可能分割期胚率(/ 受精卵)に差はなかった(Primo6↓:78.3%,Primo-7↑:76.1%).移植可能胚盤胞率(/ 移植可能分割期胚数) にも
差はなかった(Primo-6↓:49.3%,Primo-7↑:46.8%).
【考察】
本検討により,2種類のタイムラプスインキュベーターによる胚培養が発生に及ぼす影響はないと考えられる.また,WOWDishは胚16個までを100μlの培養液で共培養しているが,共培養の個数による影響も少ないと思われる.以上のことから,個別Drop 培養と共培養に差はないと示唆された.