Papers and Abstracts

論文・講演抄録

均衡型染色体異常症例の着床前診断での胚盤胞評価や患者背景と胚の染色体異常との関連

学術集会 一般演題(口頭発表)

2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:中野 達也1)・庵前 美智子1)・佐藤 学1)・中岡 義晴1)・森本 義晴2)

1)IVFなんばクリニック
2) HORACグランフロント大阪クリニック

Abstract

【目的】
当院では十分なインフォームドコンセントを行った上で日本産科婦人科学会の承認を受け,均衡型染色体構造異常の患者を対象に着床前診断を実施している.
これまでに実施した18症例36周期のほとんどを胚盤胞からの栄養膜細胞生検で行っている.
そこで本検討では,胚盤胞生検より得られた診断結果と胚盤胞の評価などに関連があるかを後方視的に比較した.

【方法】
日本産科婦人科学会の承認の得られた均衡型染色体構造異常保因者18症例を対象とした.
2012年2月~ 2017年6月までに胚盤胞にて着床前診断を実施した36周期129個の胚盤胞を対象とした.
その後,診断した胚盤胞の染色体正常率を胚盤胞の発育段階,ICM 及びTEのグレード,胚齢別に検討した.
また,診断した胚盤胞の染色体正常率及び転座が起因した異数性異常率(異常①),その他の異数性異常率(異常②)を保因者の性別及び採卵時の母体年齢別に検討した.

【結果】
発育段階別の染色体正常率に差はなかった(BL3:22.2 %(6/27),BL4:23. 4%(23/ 98),BL6:50. 0%(2/ 4)).
また,I CMグレード別でも差はなかった(A:30. 0%(3/ 10),B:22. 4%(26/ 116),C:66. 7%(2/ 3)).
さらに,TEグレード別でも差はなかった(A:20.0%(2/10),B:25.6%(20/ 78),C:22. 0%(9/ 41)).胚齢別では5日目胚盤胞で29. 1%(24/ 86),6日目胚盤胞で16.3%(7/43)と差はなかった.
保因者性別では差がなかった(妻:正常が24.5%,異常①が67.0%,異常②が35.4%,夫:正常が28.6%,異常①が61.9%,異常②が52.4%).
採卵時の母体年齢別で差はなかった(34歳まで:正常が23.2%,異常①が69.6%,異常②が33,9%,35 ~ 39歳:正常が27.9%,異常①が60.7%,異常②が39.3%,40歳以上:正常が16.7%,異常①が83.3%,異常②が58.3%).

【考察】
胚盤胞の発育状態やグレードと染色体の正常性に関連はみられなかった.
しかし,胚齢においては差がなかったものの6日目胚で染色体正常率が低く,胚発育の遅延と染色体異常には関連があることが示唆された.
また,保因者の性別の違いによる転座及びその他の染色体異常率に差はなく,性別よりは転座部位の違いの方が影響し易いと考えられた.
母体年齢において差はなかったものの加齢に伴って転座に起因した染色体異常率が増加していた.
このことから,加齢により転座染色体の交互分離以外の分離様式が増加することが示唆された.
さらに,その他の異数性異常率も母体加齢により増加していることから,近年海外で多く報告されている結果と一致の傾向を示した.

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