初期胚培養のGM-CSF 使用は,凍結融解胚移植周期において妊娠率向上に寄与する
2019年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:古山 紗也子・杉下 陽堂・洞下 由記・柏木 恵・松山 夏美・中嶋 真理子・鈴木 由妃・澤田 紫乃・岩端 秀之・高江 正道・鈴木 直
聖マリアンナ医科大学 産婦人科学
Abstract
【目的】
近年着床不全や流産の原因の一つとして,顆粒球マクロファージコロ ニー刺激因子(GM-CSF)濃度が低値であることが報告されている. GM-CSF 含有培養液を胚移植周期に用いることで妊娠率向上に寄与 することが知られているが,採卵周期におけるGM-CSFの使用が妊娠 率に与える影響については報告がなく,今回後方視的検討を行った.
【対象・方法】
2013年1月~ 2018年12月に当院にて採卵を行なった症例のうち, GM-CSF 含有培養液(EmbryoGen/Oligio 社)の使用に同意が得られ た,374周期,82症例,1,127個の胚を対象とした.cIVFまたは ICSI を行い,Day1からDay3までの初期胚培養期間において EmbryoGen を使用し, 新鮮胚移植または凍結融解胚移植を行なった.当院では胚移植時の培養液にEmbryoGenは使用していない.統計処理はカイ 二乗検定を用いた.
【結果】
EmbryoGen使用(以下Gen)群および非使用群における良好胚到達 率は, 初期胚において各41.8%(173/414),45.2%(322/713), 胚盤胞 において各11.4%(31/299),10.3%(56/543)であり,両群に有意差は認 められなかった.新鮮胚移植における妊娠率は,各18.2%(4/22),9.8% (4/41)であり,Gen 群において有意差は認められないものの, 高い傾 向にあった.凍結融解胚移植における妊娠率は,各28.4%(19/67),9.6% (11/114)であり,Gen 群において有意に高率であった(p<0.01).また 媒精方法別の検討したところ,cIVFの妊娠率は, 各20.0%(6/30), 12.0%(6/50)であり有意差は認められなかったが,ICSIにおける妊娠 率は, 各33.3%(13/39),10.6%(7/66)となり,Gen 群において有意に高い結果となった(p<0.01).
【考察】
生体内ではGM-CSFは, 腟内射精の免疫応答により卵管内での濃 度が上昇することがわかっている.そのため, 生体内では初期胚の時 期にGM-CSF 高濃度環境にあることが予測される.今回の検討では 良好胚到達率には有意な差は認められなかったが, 胚移植あたりの臨 床妊娠率が有意に上昇した.また, その傾向は ICSIにおいて顕著で あり, 初期胚培養においてGM-CSF 含有培養液は妊娠率の上昇に寄 与する可能性が示唆された.