凍結胚盤胞回復培養期間中におけるGM-CSF含有培養液の使用が妊娠に及ぼす影響
2018年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:山上 一樹・魚住 卓矢・古橋 孝祐・辻 優大・岩﨑 利郎・岡本 恵理・水澤 友利・松本 由紀子・苔口 昭次・塩谷 雅英
英ウィメンズクリニック
Abstract
目的:近年、流産経験のある患者では、妊娠期間中の血中顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)濃度が流産未経験者と比較して低値であることが報告され、GM-CSF欠乏が流産の一因となることが示唆されている。GM-CSFは分割期胚凍結融解胚移植において融解後の回復培養および移植時に培養液に添加することによって流産率が低下したと報告されている。一方、GM-CSF含有培養液を用いた胚盤胞凍結融解胚移植については報告が無い。そこで本検討では、SAGE 1-Step medium®(Origio社)を対照とし、凍結胚盤胞融解後の回復培養および移植におけるGM-CSF含有培養液BlastGen®(Origio社)の使用が妊娠に及ぼす影響について検討した。
方法:2017年4月から6月までに当院にて単一凍結融解胚盤胞移植を行った症例を対象とした。融解後の回復培養に用いる培養液をGM-CSFを含まないSAGE培養群(S群;n= 59)とGM-CSFが2.0 ng/mlの濃度で添加されているBlastGen培養群(B群;n=60)の二群にランダムに振り分け、各群における化学妊娠率、臨床妊娠率、心拍陽性率、化学流産率および流産率を比較検討した。BlastGenには2.0 ng/mlのGM-CSFが添加されている。融解後の胚盤胞は約3時間の回復培養を行った後、約20μlの培養液とともに移植用カテーテルに吸引、患者子宮腔内へ移植した。
結果:S群およびB群における化学妊娠率(61.0% vs 51.7%,p=0.30)、臨床妊娠率(37.3% vs 40.0%, p=0.76)、心拍陽性率(32.2% vs 35.0%, p=0.75)、化学流産率(38.9% vs 22.6%, p=0.15)および流産率(31.8% vs 33.3%, p=0.91)に有意な差は認められなかった。
考察:本検討において、凍結胚盤胞融解後の回復培養および移植におけるBlastGenの使用は化学妊娠率、臨床妊娠率、心拍陽性率、化学流産率および流産率に影響しないことが明らかになった。GM-CSFは初期胚培養に効果的であるとの報告が多数みられることから、胚発生初期に重要である一方で胚盤胞への発生以降の成長および着床には大きく影響しないのではないかと考えられた。