Papers and Abstracts

論文・講演抄録

二重筒式遠沈管(ラピッツ)を用い た精子処理方法の臨床的有用性 の検討

学術集会 一般演題(口頭発表)

2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:木下 茜・泊 博之・國武 克子・内村 慶子・竹原 侑希・下瀬 瞳・荒牧 夏美・久原 早織・本庄 考・詠田 由美

アイブイエフ詠田クリニック

Abstract

【目的】

現在,成熟精子の回収には密度勾配液を用いた遠心分離法が広く実施されている.当院においても精液の調整にPercoll 液を用いPercoll単層法または連続密度勾配法で処理を行っているが,遠心後の上清除去操作に時間がかかるとチューブ壁面の夾雑物が流下してしまうことや,上清除去操作技術の習得に時間がかかることなどの改善すべき課題が生じている.そこで本研究では,遠心分離後の上清除去が簡便な遠沈管である,二重筒式遠沈管(ラピッツ)を用いてその臨床的有用性を検討した.

【方法】

患者の同意を得られた精液検査後廃棄予定となった精液を供試検体とした.運動精子濃度別にPercoll 単層法と(検討1)と連続密度勾配法(検討2)で処理した.遠心用デバイスに15ml コニカルチューブを使用した群を従来群,ラピッツを使用した群をR 群とし,同一精液を等量に分けて処理した.遠心後,従来群ではスポイト吸引にて,R 群では内筒を引き抜き上清を除去した.それぞれ精子ペレットを0.5mlの培養液で回収し,精子数のカウントを行った.両群の運動精子濃度,精子運動率および遠心後から精子回収に要した時間(処理時間) を比較した.

【結果】

検討①処理前の精液量は 2.3±1.3ml,運動精子濃度は4.4±2.7×106/ml ,精子運動率は31.3±10.0%であった.(n=19) 処理後の従来群とR 群の運動精子濃度(×106/ ml )は1. 9±2. 4,1. 7±2. 1,精子運動率 (%)は42.4±21.2,56.9±21.4,処理時間(秒)は51.1±9.2,41.3±8.3 であり,精子運動率と処理時間で有意な差がみられた.(P<0.05)検討②処理前の精液量は2.5±1.1ml ,運動精子濃度は29.1±18.5×106/ml,精子運動率は53.1±26.2% であった.(n=36) 処理後の従来群とR 群の運動精子濃度(×106/ml)は14.0±12.1,12.2±11.2,精子運動率 (%) は74.8±14.6,85.1±14.9 ,処理時間(秒)は49.6±7.5,36.9±5.8 であり,精子運動率と処理時間において有意な差がみられた.(P<0. 01 )

【考察】

ラピッツは遠心後の上清除去操作が簡便であり,精液処理時間が有意に短縮した.また,ラピッツにおいても従来法と同等の運動精子を回収でき精子運動率の有意な改善が見られたことから,ラピッツの使用により上清除去時に夾雑物が流下することを防いだと考えられた.技術習得に関しては試験できていないが遠心後の精子ペレットの回収が非常に容易になったため,精子処理に慣れていない術者でも容易に質の高い精子処理技術を習得することが可能と思われる.以上のことより,精子処理にラピッツを用いることの臨床的有用性が示唆された.

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