Papers and Abstracts

論文・講演抄録

主席卵胞はTop quality か?

学術集会 一般演題(口頭発表)

2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:牧野 いずみ・上代 傑・貴志 真衣・町田 遼介・山根 里歩・佐藤 善啓・菊池 芙美・江崎 敬

池袋えざきレディースクリニック

Abstract

【目的】
調節卵巣刺激法では複数の卵胞を発育させ採卵個数を増やすことで,採卵あたりの成績の向上が図られている.
主席卵胞が18mm前後に達した時点で採卵を行うことが一般的だが,卵胞径が18mm前後であっても良好な卵子が回収できるとは限らない.
一方で比較的小さな卵胞からであっても良好な卵子が得られることもある.
調節卵巣刺激により複数の卵胞が発育する場合,卵胞径にばらつきがみられることが多々あるが,主席卵胞由来の卵子が次席以下の卵胞由来の卵子と比較して最良の卵子と言えるかどうか未だ明確にはなっていない.
そこで我々は,調節卵巣刺激を行い複数の大小不同の卵胞発育が認められた症例に対し,主席卵胞由来の卵子が次席以下由来の卵子と比較して良好な卵子であるのかを検討した.

【方法】
2016年10月~ 2017年6月までに体外受精を行い,12mm 以上の卵胞が3個以上確認できた症例のうち,主席卵胞径が16mm ~ 20mmで採卵決定を行った261周期を対象とした.調節卵巣刺激により発育した卵胞は採卵決定時の卵胞径の大きさに順じて主席,次席,三席とした.
それぞれの卵胞から得られた卵子を個別に培養し,媒精またはICSIを施行した.
各群における平均卵胞径と穿刺卵胞数あたりの回収率,未熟卵率および変性卵率について3群間で比較した.
また,正常受精数,分割胚数,胚盤胞数,良好胚盤胞数についても同様に3群間で比較した.

【結果】
対象患者の平均年齢は36.2±4.4歳,平均採卵回数は1.9±1.4回,穿刺卵胞数は主席,次席,三席それぞれ261個ずつ,決定時の平均卵胞径は主席18.3±1.5mm,次席16.9±1.9mm,三席15.8±2.1mmであった.
穿刺卵胞数あたりの主席,次席,三席それぞれの卵回収率は72.8%,77.0%,77.4%,未熟卵率は3.8%,2.7%,4.2%,変性卵率は9.2%,6.5%,5.7%と3群間で有意な差を認めなかった.
また,穿刺卵胞数あたりの主席,次席,三席それぞれの受精数は110個,124個,139個と,三席では主席と比較して受精数が有意に多かったものの,その後の胚発生を見ると,分割胚数は122個,134個,141個,胚盤胞数は94個,101個,99個,良好胚盤胞数は61個,65個,62個であり,穿刺卵胞数あたりの胚発生は3群間で有意な差を認めなかった.

【結論】
12mm ~ 20mmの卵胞であれば,主席,次席,三席のどの卵胞由来であっても,採卵および,その後の胚発生に差は認められなかった.
調節卵巣刺激法で複数卵の採卵をする場合に,主席卵胞から得られた卵子が他の卵胞由来の卵子と比較してTop qualityとは限らないことが明らかとなった.

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