一定期間の凍結貯胚コース(SFコース)を企画して
2018年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:村田 泰隆・織田 文香・清水 雅司・石橋 双葉・佐藤 菜々子・村田 朋子
ARTクリニックみらい
Abstract
目的:妊娠治療は時間との闘いである。女性の年齢上昇とともに妊娠率は低下、流産率は上昇し挙児を得るチャンスは縮小する。そこで少しでも若いライフステージの一定期間内に、可能な限りの卵子を搾り出し(squeeze)、一定能力のある受精卵を凍結保存(freeze)、そして最後に融解移植を行うSFコース(当院称)を企画し、希望者を募って実施した。その結果、意義を振り返りたい。
方法:卵巣予備能低下者(AMH1.0ng/ml以下)、高年齢者(40歳以上)、低反応者(過去の卵巣刺激で反応不良)らを対象とした。治療期間は3か月間とし、期間中AFが見えれば月経周期を問わず採卵を検討、受精し発育した胚(原則胚盤胞)を凍結保存、採卵期間終了後に融解移植とした。
結果:2017年6月より26名に対し計120周期の採卵を行い、連続採卵後半、黄体期採卵周期の成績非劣性を確認したが(SF1期)、2018年1月よりさらに21名に対してコースを実施(SF2期)、症例数を増やして再検討を行った。1期2期あわせて47名がコースに参加(3名が重複参加)し計216周期の採卵を行った。治療期間22-128日間に、平均4.6回(2~7)の採卵を実施、1コース一患者あたり平均で13.8個(1~34)採卵、正常受精卵8.8個(1~23)を得て、培養後4.9個(0~17)の胚を凍結保存した。コース終了後に融解移植を行い、エントリー44名中、17名が臨床妊娠、うち13名が継続妊娠、継続妊娠に至らず治療を終結した方が5名、治療継続中が26名である(2018.7時点)。連続採卵を行って後半に成績が低下しないか、採卵1~2回目群(94周期)と3回目以降群(122周期)とに分けて比較したところ、胚利用率はそれぞれ32.5%と38.0%で差がなかった。月経中から卵胞刺激を開始した従来スタート群(163周期)と、それ以外の時期から開始したランダムスタート群(53周期)とで比較したところ、胚利用率はそれぞれ33.6%と44.1%で、ランダムスタート群でより胚利用率が高く、有意差があった。
考察:終結予備群を含む難治症例を対象とした治療で、3か月間で平均4.9個の胚を凍結、その後一定症例が継続妊娠に至った。短期間に採卵を繰り返し行っても、ランダムスタートで黄体期に採卵を行っても成績低下は見られず、より早いライフステージの一定期間内に、移植に先行して採卵を繰り返すsqueeze & freeze法は、挙児獲得のチャンスを高める一手法となりそうである。また連続採卵が患者に与える肉体的・精神的・経済的負担にも配慮が必要と感じた。SF法に対する患者の関心度は高く、引き続き症例を重ねて検討を行いたい。