ピエゾICSIが技術習得期間にお よぼす影響
2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:平岡 謙一郎1,2,3,4)・齋藤 雅人2),梶 哲也2) ・市橋 あゆみ2)・栖原 貴子2)・大塚 喜人2)・石川 智則3,4)・大内 久美2)・原田 竜也1)・川井 清考1,2,3,4)
1) 亀田IVFクリニック幕張 生殖医療科2) 亀田メディカルセンター 生殖医療科3) 東京医科歯科大学 産婦人科4) 国立研究開発法人日本医療研究開発機構
Abstract
【諸言】
生殖補助医療において顕微授精(Intracytoplasmic sperm injection;ICSI)は必須の基幹技術である.ICSIは先端が尖ったICSI 針を卵細胞質内に穿入して卵細胞質を吸引して破膜をしてから精子を注入する方法(従来法)が広く行われている.破膜をする際のICSI 針内への卵細胞質の吸引操作技術の習得,均一化が難しいため生存率・受精率は培養士毎にバラつきがあると考えられる.
近年,先端が平坦なICSI 針を卵細胞質内に穿入してICSI 針の中に卵細胞質を吸引せずにピエゾパルスにより破膜後に精子を注入するピエゾICSIの有用性が報告されている.これにより,経験年数に関係なく一定の操作を再現出来る.ピエゾICSI は従来法に比べて操作にバラつきが少なく技術習得が早いと考えられるが,これまでにピエゾICSIの技術習得の早さについて検討した報告はない.そこで今回,我々はピエゾICSI がピエゾICSI 未経験者の技術習得の早さにおよぼす影響を検討した.
【対象および方法】
2014年7月から2016年2月までの間,亀田メディカルセンターにてピエゾICSI を行った500個の成熟卵子を対象とした.ピエゾICSI の指導者(ピエゾICSIの経験年数4年)が亀田メディカルセンター就任後の始めの100個の20個区切りの累(1-20,1-40,1-60,1-80,1-100個目)の生存率および受精率を,ピエゾICSI 未経験者の技術指導後の4名のピエゾICSIを始めてからの100個の20個区切りの累積(1-20,1-40,1-60,1-80,1-100個目)の生存率および受精率を比較した.
【結果】
ピエゾICSI 指導者とピエゾICSI 未経験者の全体の生存率は97%(97/100)と95%( 378/400),受精率は84%( 84/100)と81%( 323/400)となり,生存率,受精率いずれにおいても有意差は認められなかった.ピエゾICSI 指導者とピエゾICSI 未経験者の始めの100個の20個区切りの累積(1-20,1-40,1-60,1-80,1-100個目)の生存率はそれぞれ
(90%,93%,95%,96%,97%)と(92%,95%,96%,96%,95%),累積の受精率はそれぞれ(85%,83%,85%,85%,84%)と(79%,83%,83%,82%,81%)であった.
【考察】
今回の検討結果より,ピエゾICSI 未経験者の生存率及び受精率はピエゾICSIを始めた最初の20個から指導者と同等の成績が得られたことから,ピエゾICSI 卵子に対して低侵襲である技術習得は早い優れた技術であることが示された.今後,ピエゾICSI 指導者が随時いない施設でも同様の成績,技術習得の早さが実証されるか検討が必要と考え
られる.