Papers and Abstracts

論文・講演抄録

ヒト初期胚の動的観察時におけ る異常卵割とその後の胚発育と の関連

学術集会 一般演題(口頭発表)

2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:宮崎 翔・岩田 京子・湯本 啓太郎・杉嶋 美奈子・溝口 千鶴・山内 至朗・田中 藍・岡田 直緒・経遠 智一・中岡 実乃里・見尾 保幸

ミオ・ファティリティ・クリニック リプロダクティブセンター

Abstract

【目的】

Time-lapse 組み込み型培養器の普及により,卵割時に3細胞以上への異常卵割を呈する胚の動的観察が可能となった.しかし,異常卵割が胚発育にどのような影響を及ぼすかについては,未だ十分な解析が行われていない.そこで我々は,異常卵割の発生とその後の胚発育との関連の解明を目的に,種々の検討を行った.

【方法】

ICSI 実施患者から得られた正常受精卵1,722個を対象とし,第一卵割時および第二卵割時に異常卵割が認められた胚について,その後の胚発育を正常卵割胚と比較検討した.本検討を行うにあたり,まず,割球としての判断基準を設けるため,卵割後の細胞核保有率と最小直径を検討した.胚の動的観察はICSI 施行後,EmbryoScope にて行った.

【結果】

卵割後の細胞核保有率と最小直径の検討より,最小直径が40μm 以上において,核保有率が78.0%になることから,本検討では,細胞質の最小直径40μm 以上を割球とした. 正常受精卵のうち,11.6%(200/1722)で異常卵割が認められた.そのうち,第一卵割時の異常卵
割は,78.0%(156/200),第二卵割時の異常卵割は14.0%(28/200)で認められた.ICSI 施行からsyngamy 到達までの胚発育速度は,正常卵割胚(22.7±4.6時間)に比して,第一卵割時の異常卵割胚(23.3±2.3時間),第二卵割時の異常卵割胚(25.6±4.8時間)と,異常卵割胚で有意に遅延した(p <0.01).また,syngamy から第一卵割までの発育速度は,正常卵割胚(2.9±1.3時間)に対し,第一卵割時の異常卵割胚(6.6±5.2時間),第二卵割時の異常卵割胚(4.8±5.1時間)と,第一卵割時の異常卵割胚で有意に遅延していた(p <0.01).さらに,多核出現率は正常卵割胚で21.1%(321/1522),異常卵割胚では30.0%(60/200)と有意に高率であった.胚利用率は,正常卵割胚の71.0%(1082/1522)に対し,異常卵割胚では30.5%(61/200)と有意に低率であった(p <0. 01).

【考察】

本検討から,異常卵割の有無は胚の発育速度および多核形成に影響することが示された.また,本検討では,第二卵割時の異常卵割胚で1例妊娠が得られたが,臨床における異常卵割胚の使用については,今後更なる検討が必要である.

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