Papers and Abstracts

論文・講演抄録

ヒト体外受精における新たな精子調整液の検討

学術集会 一般演題(口頭発表)

2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:久原 早織・泊 博幸・國武 克子・内村 慶子・竹原 侑希・下瀬 瞳・荒牧 夏美・吉永 菜都美・橘高 真央・日高 直美・西村 佳与子・本庄 考・詠田 由美

アイブイエフ詠田クリニック

Abstract

【目的】
近年,ヒト体外受精における精子調整は,運動良好精子の回収だけではなく,精子の生理的機能に関しても注目されている.
本研究は,生体内での精子の生理的環境を模したORIGIO® Gradient SystemTM(OGS)に着目し,その臨床的有用性を検討した.

【方法】
検討1:2016年2月から10月までの期間に当院にて実施したconventional-IVF 87 周期を対象とした.
精子調整液は,80% Percollを使用した周期(従来群)とOGSを使用した周期(OGS群)の2群に無作為に割り付けした.
精子調整方法は,密度勾配遠心法により成熟精子を回収し,その後swim-up法により運動良好精子を回収し媒精に供した.
媒精から18時間以内に受精確認を行い個別に培養した.
両群の受精率と胚発生能を比較した.
検討2:精子自動分析装置(CASA)を用いて,従来群とOGS群の精子運動機能を評価した.
運動機能の評価には,CASAの評価項目に加えハイパーアクチベーションの指標の一つであるフラクタル次元D 値(D=log(n)/{log(n)+log(VSL/VCL)})を求め評価した.

【結果】
検討1:患者背景と精子調整前後の所見に有意差は無かった.
IVF周期における従来群とOGS 群の正常受精率は,各68.6%, 77.6%,分割率は,各99.0%, 97.4%,Day2 良好胚率は,各37.5%, 49.8%,胚盤胞率は,各58.3%, 63.6%であり,正常受精率とDay2良好胚率がOGS 群で有意に高かった(p < 0.05).
検討2:同一症例の精液を等量にわけ検討を行ったため,両群における精液所見に差はない.
また,精子調整後の総精子数,総運動精子数,精子運動率も両群間に有意差はなかった.
精子調整後0, 1, 2, 3, 4, 5, 6時間での精子機能を評価した結果,直線速度,曲線速度,平均速度,頭部振幅,頭部振動数は両群間に有意差はなかった.
直進性は4時間以降でOGS 群において有意に低かった(p < 0.05).直線性は5時間以降でOGS 群において有意に低かった(p < 0.05).
フラクタル次元D 値は5時間以降でOGS 群において有意に高かった(p < 0.05).

【考察】
OGS 群においてIVF周期の正常受精率とDay2良好胚率が有意に高かったことより,IVF周期の精子調整には運動良好精子の分離だけではなく精子機能を考慮した手法が有用であり,OGSの臨床的有用性が示唆された.
また,当院においては,ハイパーアクチベーションの指標の一つとなるフラクタルD 値が高くなる精子調整処理後4-5時間に媒精していることから,媒精時の精子のハイパーアクチベーション率が受精や胚発育の改善に繋がっているのではないかと考えられた.

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