ヒト体外受精における新たな精子調整液の検討
2018年度 学術集会 一般演題(口頭発表)
発表者:久原 早織・泊 博幸・國武 克子・内村 慶子・竹原 侑希・荒牧 夏美・権藤 咲紀・齋藤 研祐・本庄 考・詠田 由美
医療法人アイブイエフ詠田クリニック
Abstract
【背景】近年、ヒト体外受精における精子調整は、運動良好精子の回収だけではなく、精子の生理的機能に関しても注目されている。本研究は、生体内での精子の生理的環境を模したORIGIORGradient SystemTM(OGS)に着目し、その臨床的有用性を検討した。
【方法】検討1:2016年2月から10月までの期間に当院にて実施したIVF 87 周期を対象とした。精子調整液は、80% Percollを使用した周期(従来群)とOGSを使用した周期(OGS群)の2群に無作為に割り付けした。精子調整後回収した精子を媒精に供し、両群の受精率、胚発生能および胚移植後の妊娠率を比較した。検討2:同一症例の精液を等量にわけ、精子自動分析装置を用いて従来群とOGS群の精子運動機能を評価した。
【結果】検討1:従来群とOGS群の正常受精率は、各69%, 78%、分割率は、各99%, 97%、Day2 良好胚率は、各38%, 50%、胚盤胞率は、各58%, 64%であり、正常受精率とDay2良好胚率がOGS群で有意に高かった(p<0.05)。新鮮胚移植周期の妊娠率は、各15%, 24%、凍結融解胚移植周期は、各18%, 27%でありOGS群で高くなる傾向がみられた。検討2:精子調整後1時間毎に精子機能を評価し、直線速度、曲線速度、平均速度、頭部振幅、頭部振動数は両群間に有意差はなかった。直進性は4時間以降でOGS群において有意に低かった(p<0.05)。直線性は5時間以降でOGS群において有意に低かった(p<0.05)。hyperactivationの指標の一つとなるフラクタル次元D値は5時間以降でOGS群において有意に高かった(p<0.05)。
【考察】OGS群において正常受精率とDay2良好胚率が有意に高かったことより、IVF周期の精子調整には運動良好精子の分離だけではなく精子機能を考慮した手法が有用であり、OGSの臨床的有用性が示唆された。また、OGS群においてフラクタルD値が高かったことから、媒精時の精子のhyperactivation率が受精や胚発育に影響している可能性が考えられた。