Papers and Abstracts

論文・講演抄録

クリニック,10 年後にめざすもの

杉山 力一

2016年度 年次大会-講演抄録Lunch time session

学会講師:杉山 力一

Abstract

ちょうど1年前,塩谷会長より,1通のメールをいただいた.

塩谷「来年IVF学会の会長をするので講演をしてほしい」
杉山「私は学術的な講演をするのはあまり得意ではないのでお断りしたい,,,」
塩谷「いや,学術的なことに限らず好きなことを話してください」
杉山「はい,かしこまりました!」
塩谷「クリニック,10年後にめざすもの」と題名を頂き,こうして私の1年が始まった.

私は常々,院長(経営者)として,いかに患者様に満足をいただくかを考え病院運営をしています.不妊クリニックにおける患者満足度は妊娠であることは間違いない.

さて,クリニックが10年後,どのような状況になっているのかこの1年間,真剣に考えてみた.日々,生活している中で思い出したこと,思いついたことをiphoneのメモに書き留め,気づけば莫大な量のメモができた.私の経営方針日記のような物である.人生でこんなに真剣に仕事に対する自分の想いを考えたことがあったであろうか,,,非常に充実した1年であった気がする.人はなぜ開業するのか,経営者は何を考えどこに向かうのか,私は医師として患者様に貢献できているか,メモは莫大過ぎるので,あと3ヶ月かけて,当日の講演までにきちんとまとめ,お届けする予定である.

近年ベンチャー企業の台頭で,多くの会社が設立されているが,その8割が10年後には閉鎖している.不妊クリニックが開業して10年後に閉鎖していることは先ずない.これは異常なことでは無いかと考えた.不妊クリニックが乱立してきているのに経営がなりたっているのは,それ以上にパイ(患者様)が増えているからに他ならない.日本の「世界最大の採卵数で世界最低の妊娠率」がこの異常な現象を支えている.ビジネスで考えると,こんな楽な話が10年後に成り立っている訳が無い.要するに,10年後には個人クリニックは過当競争の時代に突入しているであろう.では,どのようにこの競争に勝ち残っていくか,あと3ヶ月真剣に考える.

一方,10年後の生殖医療は間違いなく「生命倫理」が問われる時代がくる.生命倫理とは,生と死に医療がどう関わるべきかの考え方であり,体外受精,遺伝子診断,などの発展で,我々開業医ですら日々対応に悩まされている.現実的なところでは受精卵着床前診断.現在は学会規制があるが法的規制は無い.もし私が患者なら,間違いなくこの診断を希望するであろう.国として10年後に指針が出ていることを切に願うが,おそらく結論が出ずに,学会規制という中途半端な体制が取られていることが想定される.10年後も世界スタンダードな生殖医療をするのに,海をわたらないと医療を受けられない時代
が終わっていることを期待する.

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