Papers and Abstracts

論文・講演抄録

カラードップラを用いた胚移植モニターの試み

学術集会 一般演題(ポスターセッション)

2017年度 学術集会 一般演題(ポスターセッション)

発表者:上田 綾香・小野﨑 美絵・藤森 友美子・福田 久恵・石川 慶子・石川 元春

いしかわクリニック

Abstract

【目的】
胚移植の際にBモードの経膣超音波下でカテーテルをモニターして胚移植する方法は広く用いられているが,カラードップラ使用の報告はない.
今回,新たな試みとして胚移植時に超音波の血流分布を表示するカラードップラを利用して胚移植時の培養液のカラーエリア動態を観察し,妊娠率との関係を調査した.

【方法】
対象は2017年3月から6月に経膣超音波下で胚移植を行った141周期とした.
カテーテル先端が同定されなかった7周期,カラーエリアが観察されなかった3周期は除外した.
超音波はVolson (e GEヘルスケア),カテーテルとガイドは北里コーポレーションのET-TUC3040SM5-22 とETTUG3022AMRT-30をそれぞれ使用した.
胚はカテーテルにハミルトンシリンジ(HAMILTON80601:0.10ml)を装着後,カテーテルを培養液で洗浄し,その後3μlの培養液とともに胚を吸い上げ,カテーテル先端から1.5μlのエアーを入れてロードした.
胚移植時,胚の入った培養液がフラッシュされた際のカラードップラモードでカラーエリアの動態を観察し,胚移植時のカラーエリアが爆発的に観察されたものをexplosive(E群),緩徐に観察されたものをslow(S 群)と分類した.
また,カラーエリアがカテーテル周囲に観察されたaround(A 群),カテーテル先端からその長軸に対して前方のforwar(d F群),先端長軸から後ろに見えたbac(k B群)に分類した.各群の妊娠反応陽性率と胎嚢確認された臨床妊娠率との関係を調べた.

【結果】
妊娠反応陽性率,臨床妊娠率は,それぞれ,E 群;35.0%(7/20),25.0%(5/20),S 群;45.0%(50/111),36.9%(41/111)で,両群間に有意差は認められなかったが,S 群の方が高値を示した.
また,方向性の検討では,妊娠反応陽性率,臨床妊娠率は,それぞれA 群;35.5%(22/62),25.8%(16/62),F 群;48.4%(30/62),40.3%(25/62),B 群;71.4%(5/7),71.4%(5/7)で,妊娠反応陽性率は各群間で有意差は認められなかったが,臨床妊娠率はA 群とB 群間にのみ有意差(p=0.012)が認められた.

【結論】
胚移植時のモニター法として通常使用されているBモードよりもカラードップラを使用した方がより培養液の動態をダイナミックにモニターすることが出来た.
当初はカテーテルからフラッシュされる前方に子宮内腔にのみカラーエリアが観察する事を予想していたが,子宮内膜方向やカテーテルの逆方向にもカラーエリアが見られた.
カラードップラモード下でカラーエリアのパターン動態と実際の培養液の移動動態の意義付けは不明で,今後さらなる検討が必要と考える.

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