Papers and Abstracts

論文・講演抄録

カテーテルおよびガイドの選択が 胚移植困難症例の着床に及ぼす 影響

学術集会 一般演題(口頭発表)

2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:下田 美怜・岩山 広・石山 舞・中谷 絢乃・林 篤史・山下 正紀

山下レディースクリニック

Abstract

【目的】

胚移植の際に子宮頚管の狭窄または屈曲のために子宮底にアクセスすることの難しい症例が存在し,このことは着床率を低下させる要因の1つであると考えられる.我々は,通常ではカテーテル6F(r ソフト)を直接挿入する方法をとっているが,胚移植困難症例に対しては,数種
の異なる硬さや太さのカテーテル用ガイドとカテーテルを使用している(北里メディカル社製).また,着床にはその他に患者因子や胚因子が影響している.本研究では,胚移植困難症例の異なるカテーテルおよびガイドの使用がカテーテル6F(r ソフト)と比較して着床に及ぼす影響
を多変量解析を用いて後方視的に検討した.

【方法】

単一胚盤胞移植を行った1,039個を対象とした.そのうち512個の着床が確認できた.胚移植にはカテーテル6F(r ソフト)のみ,カテーテル3F(r ソフト)・ガイド(細),カテーテル6F(r ソフト)・ガイド(太),カテーテル3F(r ハード)・ガイド(細)を用いた.また,患者因子として採
卵時年齢(34歳以下,35 ~ 39歳,40歳以上),胚移植時内膜厚(8mm未満,8mm 以上),胚因子として受精手技(IVF,ICSI),グレード(良好,不良),胚移植因子として移植周期(新鮮胚,凍結融解胚Day5,凍結融解胚Day6),超音波でのカテーテル先端確認(確認,確認できず),再移植実施(有り,無し)について,着床との間に有意な関係があるかを検定した.

【結果】

各カテーテルおよびガイドの調整済オッズ比(Adjusted odds ratio:AOR)と95% 信頼区間(95% Confidence interval: 95% CI)は以下の通りであった.カテーテル3F(r ソフト)・ガイド(細)(AOR: 1.15, 95%CI: 0.78-1.71)はカテーテル6Fr のみ(ソフト)(参照因子)と比較して有意な差は見られなかった.一方で,カテーテル6F(r ソフト)・ガイド(太)(AOR: 1.99, 95% CI: 1.50-2.65),カテーテル3F(r ハード)・ガイド(細)(AOR: 3.90, 95% CI: 2.46-6.28)は危険因子として有意な関係を示す要因だった.その他,着床に有意な影響を及ぼすとして同定された因子は採卵時年齢 35 ~ 39歳および40歳以上,グレード不良,移植周期が凍結融解胚Day6 および新鮮胚であった(p<0.05).

【考察】

胚移植困難症例のカテーテルおよびガイドの選択は他の因子と同様に着床に影響を及ぼす可能性が示された.また,太いガイドおよびハードカテーテルの使用は着床に対して負の要因となることが示唆された.このうちカテーテル3F(r ハード)・ガイド(細)の使用が最も着床の危険因子となり,改善の余地があると考えられた.

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