―総説― ARTと着床免疫～慢性子宮内膜炎について
2023年度 学会誌 掲載論文｜日本IVF学会雑誌 Vol.26 No.2 28-32
著者：杉本澄美玲・木村文則
奈良県立医科大学 産婦人科
Abstract
近年、ARTにおける着床障害の原因の一つとして、慢性子宮内膜炎（Chronic endometritis：CE）が注目されている。CEは、子宮腔内への病原性微生物などの抗原が子宮内に存続し、その抗原に対して免疫学的応答が持続している状態である。症状は、無症状から軽微な骨盤痛や不正性器出血まで様々である。最も使われるCEの診断方法は、子宮内膜間質に形質細胞の浸潤を認めることであるが、現時点では標準化された基準が存在しない。CEの患者では、子宮内の免疫学的微小環境が変化し、それにより着床が妨げられると考えられる。本稿において、慢性子宮内膜炎の概要とその子宮内免疫環境を含めた最新の研究結果を要約し、今後の展望とともに述べる。
キーワード：子宮内膜細菌叢、慢性子宮内膜炎
