Papers and Abstracts

論文・講演抄録

―原著― ART時代のFT(卵管鏡下卵管形成術)の役割について

学会誌 掲載論文

2023年度 学会誌 掲載論文日本IVF学会雑誌 Vol.26 No.2 53-59

著者:苔口昭次・岡本恵理・水澤友利・林奈央・山田聡・十倉陽子・江夏イーシェン・山田愛・片山和明・山田弘次・芳川裕美子・江口武志・江夏徳寿・江夏国宏・塩谷雅英

英ウィメンズクリニック

Abstract

FT(卵管鏡下卵管形成術:falloposcopic tuboplasty)は多くの施設で行われるようになってきている。FTは近位端卵管通過性異常と診断した卵管性不妊患者に有効で術後約1年以内に30%近くの妊娠率を得ている。挙児希望の年齢が上昇し一般不妊治療をショートカットし体外受精治療へ移行される例も多くなっている。FTの役割をFT後妊娠例からの視点で分析した。タイミング法後妊娠と人工授精妊娠例にFTがどのくらい寄与しているかをみると35歳前後でFT後に妊娠例が増える傾向にあった。35歳以降には一般不妊治療での妊娠率も下降するのでFT適応患者には強く勧めているためと思われる。また、FT術前には卵管異常の程度にかかわらず妊娠を期待できる(約30%)と説明しているが、術後にFT所見から患者にエビデンスに基づいて提案できることの報告はない。今回の検討から卵管内のヒダなどの所見異常が高度である例であっても2-3か月に集中して妊娠に至っている例が多い。その結果からすると卵管内異常所見の高度症例には、3-4か月一般不妊治療を行っても妊娠に至らない場合早目にステップアップを勧めることが望ましいことが判明した。

キーワード:卵管鏡下卵管形成術(FT)、体外受精(IVF)、卵管性不妊、卵管

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