Papers and Abstracts

論文・講演抄録

―原著― ホルモン補充周期での凍結胚移植は産科合併症のリスク因子である

学会誌 掲載論文

2023年度 学会誌 掲載論文日本IVF学会雑誌 Vol.26 No.2 65-70

著者:山田弘次・片山和明・江口武志・小寺花織・芳川裕美子・江夏徳寿・山田愛・林奈央・江夏宜シェン・十倉陽子・山田聡・水澤友利・岡本恵理・苔口昭次・塩谷雅英

英ウィメンズクリニック

Abstract

2022年4月からARTの保険化が開始され、これまでARTを考えていなかった患者層にとっても治療に対する敷居が低くなった。しかしART患者が増加する中、凍結胚移植、特にホルモン補充周期移植(HRC-FET)による合併症が近年多く報告されている。HRC-FETは通院回数が少なく、移植日の調整が可能であるため患者にとって利便性が高い。またクリニックにとってもその管理が簡便であるため、当院でも以前はHRC-FETが移植の主流であった。

そこで凍結胚移植のなかでもHRC-FETとNC-FETにおいて、妊娠症例の産科合併症の頻度をHRC-FET 2597例とNC-FET 855例で比較検討した。

その結果、HRC-FET群では、妊娠高血圧症候群(HDP)、弛緩出血、癒着胎盤、帝王切開、輸血施行の発症頻度がNC-FET群に比し有意に高率であった。また、弛緩出血(分娩時異常出血)において、1000ml以上、2000ml、3000ml、4000ml以上の大量出血に分けて比較検討したところ、HRT-FET妊娠群では全ての出血量でその発症は有意に増加していた。妊娠糖尿病(GDM)、前置胎盤の発症率は両群において有意差は認めなかった。

以上より凍結胚を移植する場合にはHRT-FETよりもNC-FETの方が、産科的に安全性が高いことが示唆された。

キーワード:ホルモン補充周期移植(HRC-FET),自然排卵周期移植(NC-FET),産科合併症

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